業務の効率化や経営改善をサポートいたします。

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情報システム導入事例

「経理を自社で!」 初めての仕訳に取り組む企業への会計ソフト活用事例

~会計ソフトとExcelが仕訳入力をサポート!2ヶ月で経理の自計化を達成!~

 

業績把握と資金繰りのために、自社の会計情報を早期に入手することはどの会社の経営者も希望していることである。しかし、自社に簿記が分かる経理担当がいないという理由で会計事務所へ月次の決算書(試算表・推移表等)の作成を依頼し、翌月末や1ヶ月以上経過後に自社の月次決算情報の提示を受け、会計情報と意思決定が結びついていない中小企業は多数存在している。

今回の情報化支援事例では、簿記に明るくない経理担当者がクラウド会計システムとExcelを活用し自社で月次決算書を作成し、月次決算の早期化に成功した事例を紹介する。今後、自計化(自社で経理業務および会計帳票を作成すること)に取り組む企業の参考となれば幸いである。

企業概要

企業名:株式会社 立枝建工

設立:平成11年(創業平成3年)

代表者:立枝 博之

事業内容:住宅用外壁材の施工・販売

資本金:1,000万円

従業員数:10人

所在地:〒358-0032 埼玉県入間市狭山ヶ原317-1

URL:http://tachi-ken.co.jp/

株式会社立枝建工(以下、同社)は、サイディングといわれる住宅の外壁の施工・販売を埼玉県入間市に拠点を構え事業を展開している。戦後の住宅の不燃化の国策を受けて、外壁にはセメントと砂と水を混ぜ合わせて作るモルタルが使われるようになったが、現在では冬場の硬化に問題のあるモルタルに代わり、工場で生産し工事現場で取り付けるサイディングが主流となり、通年で工事が可能となった。同社はサイディングに加え、住宅用外壁全般を取り扱っている。

同社は、年間1,500件程度の施工を請け負っており、メーカーからもその実績を度々表彰されるなど、地域のサイディング業者としての地位を確立している。近年は、自社工場で事前にサイディングをカットするプレカット事業も好調である。サイディングを事前にカットすることにより、工事現場での騒音、粉じん、廃材処理の問題の解決に取り組んでいる。

業績把握の課題

同社の経理業務は図表3の通りであり、月中は現金出納帳を記入、預金通帳の記帳を行い、翌月初めに必要な書類を全て揃え会計事務所へ送付し、翌月20日頃に会計事務所が月次決算書を社長に持ってくるという流れであった。

<システム導入前の経理の流れ>

社長は、翌月の20日頃に月次決算書の数値を確認はするものの、「売上」「費用」「利益」の数字を事実として把握するにとどまっていた。その数値は1ヶ月前の過去の数値であり、感覚でつかんでいた数値を改めて事実として確認するだけのものであった。月次決算の情報から次のアクションへとつながることはなかったのである。

また、元帳等の取引情報は年末にまとめて紙で提供されるため、取引情報として参照することは困難であること、社長が月次決算情報を経理と共有していなかったことから、経理では支払や資金の準備に苦労することも多かった。

<業績把握と経理業務の課題>

 

  • 月次決算の情報から次のアクションへとつながることがない
  • 経理業務に必要な情報がなく、支払や資金の準備に苦労している

業務改善計画

そこで月次決算を早め、月次決算書を経営層の有用な意思決定情報として活用するための改善計画が立案された。月次決算書の早期入手のためには、自社での経理業務を行い、そのために会計ソフトを導入することが望ましいが、簿記を理解し仕訳伝票を作成できる人材がいないことが問題となった。

<月次決算早期化の問題>

 

仕訳が分からなくても会計ソフトへ入力ができる方法を、経営コンサルタント、会計事務所、会計ソフト導入支援業者により検討し、以下の方法で経理担当者が仕訳を入力することが可能となった。

 

■現金・預金

 現金出納帳の記帳はこれまでも行っており、同じ形式で仕訳を入力できる会計システムの現金出納帳入力機能を利用。預金も預金通帳と同じ形式の預金通帳入力機能を利用する。

■売上、工事原価

これまでExcelで作成していた「材料費一覧表」「外注費一覧表」「請求書一覧表」から会計システムで取込み可能なデータ(CSV)を作成する機能を開発。経理担当者は今まで通りExcelの一覧表を作成すれば、売上と工事原価の仕訳を会計システムへ入力することが可能となる。

<会計システム連動データ作成Excelファイル>

 

以上の取引で月に発生する取引の95%近くとなり、その他特殊な取引は会計事務所と協力して入力を行う。経理担当者の不慣れな入力をサポートし、特殊な取引を協力して入力するためには、同社が入力した仕訳データを会計事務所でもリアルタイムに参照する仕組みが必要である。そこで、インターネット上でシステムを利用するクラウド型の会計ソフトを選択した。クラウド型の会計ソフトでは、仕訳データはインターネット上に蓄積され、同社からも会計事務所からもリアルタイムにデータを見ることができる。

<会計システム導入後の経理の流れ>

導入効果

同社は、会計システムを活用し、月次決算書の自社による作成と翌月10日に月次決算を完了することに成功した。経理担当者は、自社で経理業務を行うことにより、経理業務の全般を見渡せるようになった。単なる現預金の出し入れの記帳から、会社の成績表を作成する業務へ変革を遂げたのである。自身の業務への責任感が高まり、会社の利益を構成する売上、原価、経費の数字にもより敏感になってきている。

経営層の変化も大きい。毎月行われる会議の共通言語に月次決算書が使われるようになった。売上や利益が過去の結果の数字ではなく、利益を出すためにはどうすればいいかを考えるための数字になった。それを最も表す出来事は、見積時の目標粗利益率の改善である。月次決算資料から必要な粗利益率を読み取ることができ、粗利益を確保するスタートとなる見積作成の時点から粗利益の改善を行ったのである。粗利益率の計算もこれまでの慣習を捨て、月次決算書上の計算方式に改めた。この改善により、着実に利益率の改善が進んでいる。また、経営コンサルタントの提案により、月次決算書に、「キャッシュフロー計算書」「経営分析表」「損益分岐点図表」が追加された。

クラウド会計システムを会計事務所と共有することにより、会計事務所とのコミュニケーションも強化された。経営層とのやりとりのなかで、従来の税込経理から、より利益を正確に把握できる税抜経理に移行することになった。経理担当者とは、疑問の残る仕訳に会計ソフトの付箋機能を活用し、質問のやりとりを行っている。

今後は予算管理機能の活用など、経営層も経理担当者も、会計情報を共通言語とした経営改善、業務改善に取り組んでいく予定である。

<会計システム導入の全体像>

<導入システムの概要>

会計システム PCA会計X クラウド版 3ユーザーライセンス ※同時接続数ライセンス
導入クライアント

事務担当者2名、社長、取締役のPC 合計4台

会計事務所PC 1台